国境の稜線 #2

多忙につき一月ぶりの谷川岳。
予報は良くないが「やっと山に行ける」チャンスなので家にジっとしていられるわけが無い。
ダメ元でロープウェイ駅を目指す。

三連休最後の日とあってか、ベースプラザは閑散としていた。
ゲレンデのスノーボーダーの姿がチラホラ見えるだけ。

登山届けを投函。
一応念のために往復のチケットを購入。

他に乗る客も無いロープウェイに一人乗り込み山上駅へ。

雪が深そうだったので構内でスプリットにスキンを装着。
ゲレンデ横の急登を上り始めると早速スキントラブル。
中腹まで登り上げたところでスキンが剥がれた・・・・・・・
スノーシューも持ってきたのが幸。
初っ端からスノーボードを背負うハメになった。

後を追ってきた二名の登山者に追い越されるが田尻尾根に登り上げる我輩とは別に彼らは田尻のトップを目指して登って行った。
後で分かったことだが、ルートを良く知らないとのことだった。

一月前は例年より雪が少なかったが、あれからずいぶんと降ったようで、昨年の今時分を上回る積雪にスノーシューはズブズブと沈み、なかなか先へ進めない。

今シーズン始めての深雪ラッセルだ。
そうこうしているうちに田尻のトップへ登り上げた登山者が追いついてきたものの、ラッセルを代わる気は無いらしい・・・・・・
ちょっと遠まわしに一言言ったらやっとその気になったようで、ラッセル交代。

二時間以上費やしてやっと熊穴沢避難小屋。
昨年の同じ頃とは比べ物にならないくらい小屋は埋まっていた。
(画像をクリックで拡大します)
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ちなみに昨年の一日違いの避難小屋。
ラッセルもきついはずである。

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避難小屋を過ぎると、深雪と強風との戦いである。
上部はすっかりホワイトアウト。
山頂付近はまったく見えない。

先行する二人の登山者のワカンのトレースは歩き難く、結局自分でラッセル。

振り返ると後ろに4名の登山者たち。
悪戦苦闘のラッセルもほぼ終わる頃彼らも到着。
「天狗の留まり場」辺りで一緒になる。

一段と風も強くなる。
相変わらずホワイトアウト。

先行の二人の登山者が先へ進まず立ち止まっているので聞くと、「ルートが全くわからないので下山します」とのこと・・・・・・
「ここまで来れば山頂まで30分くらいですよ」と言ったが、彼らは下山して行った。
ここから上部は最も遭難が多いエリア。
地形を知らないのなら下山が正解。
山頂を間近にしても、下る決断ができる勇気を称えたい。

俺を含めて7人いた登山者も、一人減り、二人減り・・・・気が付くと一人が付いてくるだけ。

天神ザンゲ岩を過ぎた最後の急登を登り切る手前から左にルートをとり、全く見えない肩の小屋を目指した。
後から付いて来る登山者がホワイトアウトで見えなくなったが、俺を見失って遭難されても困るので寒風の中で立ち止まって待っていると彼の姿が見えた。

無言で小屋の方向へ導く・・・・・・・・・・

ピッタリ、進行方向に肩の小屋が見えてきた。

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こんな天候のとき、ここに小屋があることの有難さをしみじみと感じる。

今日はここまで5時間ジャストかかってしまった。
体はすっかり冷え切っている。

入り口のドアが積雪のために開かない・・・・・・・
外に備え付けのスコップで雪をかき、やっと中へ入る。
THERMOS に入れてきたレモンティがうまい。

小屋の中にも雪が吹き込んできて溜まっている。
二人で中の雪をかき出し、ようやく一段落。

カップラーメンを腹に流し込み、彼は小屋に荷を置いて山頂を踏んできた。

ガスの晴れるのを待っていると時折太陽の輪郭が見え、刹那下界の景色が見えたものの、またホワイトアウト。

これ以上待っても晴れる可能性は無さそう・・・・・・
この時期は日が短いのでそうそうのんびりもしていられない。
登山者の彼と小屋を後にする。

スノーボードを装着し滑走の準備をしてガスの切れ間を待っていると、登山者の彼は西黒尾根方面へ歩いていく・・・・・・・
やばいやばい・・・・・

あれじゃ遭難間違いなしだよ!

滑りながら彼に近づき、「ルート違いますよ! ちょっとこっちに来過ぎです」

登ってきたときのトレースは強風ですっかり跡形も無く消えている。

刹那ガスが切れ、天神ザンゲ岩が見えた。

「あれがザンゲ岩です。あっちの方向へ下ってください」
「右(西)へは絶対に下らないように・・・」と地形の要点を彼に伝え、下山を促す。

おそらくホワイトアウトは天狗の留まり場付近から上だけのはず。
彼が留まり場へ近づき、無事下山していることを確認してから滑り降りようと、寒風の滑り出しのポイントでしばし時を待つ。

頃合を見計らって肩の広場へ滑り出す。
雪はパックされていていささか硬め。
決して快適な滑りではないが、熊笹は完全に埋まっている。
先が全く見えなくなり、吹き溜まりの壁に一度激突。
気を取り直して滑り出すとガスも切れ、西日射す天神の稜線に下山してきた彼の姿を見つけ一安心。

ここまで来れば視界は良好なので遭難の心配は無い。
彼を置いて先に避難小屋まで一気に滑り降りる。



避難小屋から滑り降りてきた稜線を振り返る。
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熊穴沢避難小屋を過ぎた辺りから、これから戻る田尻尾根方面を望む。

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西黒沢の核心部。
そろそろ滑れそうだ。
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滑った肩の広場の一部と「天狗の留まり場」付近の稜線を振り返る。

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残照の西黒尾根南面

ここのお気に入りの斜面を滑れるのはもうちょっと先かな・・・

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ほとんど歩きに費やした一日だったが、一月ぶりの谷川岳はやっぱり楽しかった。
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by sakusaku_fukafuka | 2013-12-24 20:46 | 2014 雪山三昧・前期 | Comments(4)

Commented by nabe_kuma at 2013-12-24 23:42
こんばんわ~
谷川岳は,sakusaku_fukafukaさんにとって,やはり "裏山" なんですね。
臨場感あふれる文章を読みながら,楽しませてもらいました。
付いてきた登山者にも気を払いながらの 的確なアドバイス,
素晴らしいです! お疲れ様でした。
Commented by 常吉 at 2013-12-25 21:10 x
今年はずいぶん雪が多いんですね。楽しみです。
私もsakusaku_fukafukaさんの他者に対する気配りは素晴らしいし真似しなきゃと思います。そのためには自分に余裕がなきゃダメですが、私はまだまだですねぇ。
Commented by sakusaku_fukafuka at 2013-12-25 21:49
> nabe_kuma さん、コメントありがとうございます。
この日に限らず、「雪の谷川岳は初めてなんです」という登山者は案外多いんです。
私が確認できた「天狗の留まり場」を越えて登ってきた登山者は私を含め7人でしたが、地形を熟知している登山者は皆無でした。
最後まで残って登ってきた方も「あなたが来なかったら来ませんでした」ということでした。
後を付いてこられて遭難でもされたら後味悪いですし、責任感じてしまいます。
見かけた以上安全を確認できないと帰れませんよね~~。
Commented by sakusaku_fukafuka at 2013-12-25 21:56
>常吉さん、コメントありがとうございます。
いえいえ、そんな格好の良いものではありませんよ~
自分の好きな山で遭難者が出たら悲しいですもんね。
自戒の意味もこめてます^^;
先シーズンも「雪の谷川岳は初めてです」という登山者をけっこう見かけました。
常吉さんもご存知の通り、ホワイトアウトの谷川岳はそれこそ「魔の山」そのものですものね。
今シーズンは雪が多いかもしれませんね。
今日も谷川岳は見えませんでした。