2019年 04月 30日 ( 1 )

平成最後、七年ぶりの槍ヶ岳

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痴呆の症状が顕著になってきた母親の面倒を看るようになってから長期に家を空けることが難しくなってきた。
そればかりか、己の年齢もそうなのだが、体力や気力の衰えさえも顕著になってきた。
スノーボードを背負って22kmを歩き通しワンデイで槍ヶ岳を目指すという、これまでやってきたスタイルもそろそろこれが最後かな、と思うようになってきた昨今。
家族に「もう一度、できるうちに槍ヶ岳周辺滑走をやりたいんだが」と話をもちかけたら、弟夫婦と娘家族がその間母を預かってくれることになり、今回目的を達成できた。

今年のGWは10連休。
気にかけていた天気予報は当初GWの天気は前半がよさそう、との予報。
ところがGWが近づくにつれ、その予報は後半に移動(泣)。
幸いなことに28、29日は天気が持ちそうなので計画通り前半に実行することにした。



27日、準備をして午後4時過ぎに出発、一路沢渡を目指す。
山は相当荒れたようだが、沢渡に到着したころは満天の星。
第二駐車場の足湯で温まり、シュラフに潜る。

3:45 起床。
パンをほうばりながら準備をしていると早くもタクシーがやってきた。
早朝出発をする登山者が来るのを待っていると第三駐車場に三名出発したい登山者がいるということで、自分だけタクシーに乗ってそちらへ移動。
合計四名乗車できて出発。
四人集まれば料金は一人当たり¥1050円。
バスは発車が遅いのでいつもタクシーを使う。
釜トンネルが予定より5分早く閉鎖解除、上高地バスターミナルへ。

上高地バスターミナルへ到着すると沢渡では見られなかった雪が・・・・・・・・・・
早朝出発の登山者のみがいるだけの閑散としているバスターミナルは寒い。
(画像をクリックで拡大します)
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登山計画書を提出して5:20分出発。
お決まりの? 河童橋にて。
さて、これから標高3080mにある槍ヶ岳山荘まで一日で22km歩くぜ!!
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穂高連峰。
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幾度も歩いているこの道。
この時期に雪があるのは初めて。
ほとんど人影は無い。
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明神岳がきれいだ。
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上高地バスターミナルを出発して約1時間。
明神。
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明神岳を仰ぎ見る。
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徳沢が近くなってきた。
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明神から回り込むように歩いてきて前穂高岳が見えるようになってきた。
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明神からおよそ40分、徳沢到着。
井上靖の山岳小説『氷壁』の舞台にもなって有名な徳沢園がある。
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前日ここまで入り、小屋泊まりやテント泊ををして涸沢や槍ヶ岳を目指す登山者も多いので、ここから登山道も人が増える。
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登山道が雪で歩けないので、ここから工事用道路を歩くことになる。
もうちょっとで横尾。
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徳沢から約50分、横尾到着。
前日にここまで入山する人が最も多いのかもしれない。

ここは涸沢と槍ヶ岳へ向かう分岐点。
ここからは徳沢に続いて更に人が増えるが、その登山者の多くは槍沢を渡って穂高連峰の登山基地『涸沢』を目指す。
直進すると槍ヶ岳へ向かうが、直進する登山者はここから激減する。
上高地からここまで11kmを歩いてきたのだが、ここから涸沢までは凡そ4km。
槍ヶ岳まではここ横尾が中間点なので、更に11km。

なぜ殆どの登山者が槍ヶ岳ではなく涸沢を目指すのかといえば、涸沢が人気のエリアだというだけではなく、単純に近いからということもあるようだ。
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俺は登山者が激減する(笑)槍ヶ岳を目指すので直進。
カップラーメン(¥400)を食べて鋭気を養う。
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さて、いや、まだあと11km歩かねば・・・・・・・・・・
横尾を過ぎると積雪が急に増えた。
以前ここをシールで歩いたことは無かったのだが、スノーボードを担ぎ疲れていたこともあって、ここからシールに切り替えた。
だが・・・・・・・・・・・
結果的にはここでシールに切り替えたのは大きな間違いだった。
履いては脱ぎ、脱いでは履く、の繰り返しで疲労困憊。
槍沢ロッジに着くころには大分疲れ果ててしまった。

槍見河原。
ここでやっと槍ヶ岳の穂先だけが見える。
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一の俣。
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ここまでで大分疲れてしまっていて板を脱ぐのも面倒になってきた。
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そのまま渡ってしばらく歩くと二の俣。
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ん~~・・・・もう面倒だ(笑)
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10:50 槍沢ロッジ到着。
もうクタクタ・・・
ここまでで2時間近くもかかってしまった。
(上高地バスターミナルから5時間)
やっぱり板の脱着、行きつ戻りつを繰り返した結果だ。
板はここまでは担いだ方が正解だった。
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ノドがカラッカラだったので冷えたCCレモンで喉を潤して出発。
この時期、木の枝が無いので槍ヶ岳が見える。
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赤沢崩れ通過。
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槍ヶ岳が見えるのだが、幾度見ても遠いなー・・・・・・・
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ババ平。
暑さと照り返しでやられる。
先を歩く登山者との距離がどんどん離れていく。

ババ平を経て大曲からが核心部。
本当に辛いのはここから先だ。
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大喰岳、中岳、燕岩、グリーンバンドが見えてきた。

直前にいる重そうなザックを背負った登山者、後で聞いたら俺と同い年。
先行する登山者たちに徐々に距離を離され、二人で励ましあいながら登ることになる。

「や~~足が前に出ません!!」
「同じです! 全く進めません!」

まだこの先に難関「グリーンバンド」があるし、殺生フュッテから最後の急登のダメ押しが待ってる。
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夏の同じ場所。
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秋の同じ場所(大曲)
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そして、最大の難関『グリーンバンド』。

ここだけ歩くのなら単なる急登に過ぎないんだけど、ここまで相当長い距離を歩いてやっと辿り着いたころに長い急登が待っているのだ。
多くの登山者はここでバテるのだが、この日も上から焼かれ、下から照り返しでやられる。
ここで、ここまで飲まずに取っておいたコカ・コーラで喉を潤す(笑)
でも、一時的な気休めなんだけどね・・・・・・

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傾斜が増し、シールでの直登ができなくなってきて、ジグを切りながら登る。
数歩歩いては止まって息を整える。
また数歩歩いては止まる・・・・・・

この辺りから『本当に今日中に山荘に着けるんだろうか』なんていうことが脳裏をかすめるようになる。

先行の同い年の登山者さんも、数歩歩いては止まって俺の方を見下ろす。
「や~~~・・・きついねー」
「足が上がりません!」

「いつかは着きますよ」

なんて励ましあいながら・・・・・
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やっとの思いでグリーンバンドを登り上げた。
ここでやっと槍ヶ岳と、槍ヶ岳山荘が見えてくるのだが、見えてからが近いようで遠い。
歩いても歩いても景色が変わらんのです。
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夏のほぼ同じ場所。
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グリーンバンドを登り上げると傾斜は緩くなるが、大喰岳の稜線の陰になり、雪がクラストしてきてシールが利かなくなってきた。
ザックを下ろすのもイヤになってきているのだが、シールが滑って後ずさりする。
致し方なくザックを下ろし、スプリットにクランポンを装着、殺生フュッテ横まで登り上げると最後のダメ押し急登。
山荘直下の急登が待っている。

陽がだいぶ傾いてきて、俺の後ろには遥か離れて登山者が一人いるのみ。

俺もバテているが、俺の後ろから来る登山者も全く歩みが進まないようで、そうとう疲れているのがわかる。

この先は急登過ぎてシールは利かない。
再度ザックを下ろし、シールを剥がし、スプリットボードを組み立ててザックにくくりつけて背負った。
上を見ると心が折れる。

また数歩登っては止まる、身体をかがめ息を整え、また数歩登るのがやっと・・・・・・・

山荘のテラスに赤いダウンを着た女性が現れてこちらを見下ろしている。
大きな声で「頑張ってー」と励ましてくれるのが聞こえた。
「最後の頑張りよーー!」

ありがとう、と返す言葉も出ないまま頑張るしかない。

何年か前までは、おれ自身があのテラスから同行した仲間に「もうちょっとだ! 頑張れー!」って言ってたんだけどなー(笑)
今は見ず知らずの女性から励まされるようになってしまった(笑)
ここでも年齢と体力、気力の衰えを痛切に実感した。
以前は15時頃には到着できたのになー・・・・・
それが17:50分、やっと山荘に到着できた。

到着したとき「どこから来られたんですか?」とテラスに出ている登山者たちから聞かれて「上高地からです」と応えたら、「え~~~そりゃー大変だったでしょう」と返ってきた。
ま、普通は横尾か槍沢ロッジで一泊し、二日目に槍ヶ岳を目指すというのが標準だからねー。

下を見下ろすと殺生フュッテ付近を最後の登山者が登ってくる。

テラスに出てきた登山者が下を見下ろし、「あれだとまだ30分はかかるな・・・」

「いや、いっこうに進んでないよ・・・直ぐに最後の急登があるから、30分じゃ無理でしょ」
なんていう会話をしている。


一緒にテラスにいた登山者に記念撮影のシャッターを切ってもらった。
疲労困憊していたけどやっと作った笑顔(笑)
「もうこれで今日は歩かなくていいんだ」という安堵感が一番のご褒美かもしれない(笑)
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暮れ行く北アルプス。
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疲れ果てて倒れこみたいくらいなんだけど、一応暮れる前の槍ヶ岳を撮っておこう。
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先に到着した登山者の夕食は全て終わっていて、最後から二番目に到着した我輩の夕食は独り(笑)

でも、山荘のスタッフに谷川岳で三度ほど我輩に会ったことがあるという青年と、偶然3000mでこういう巡り会わせでお会いできて話しに花が咲いた。
しかし、疲れすぎていて夕食の半分くらいは残してしまった。
山荘のスタッフには申し訳ないが、本当に食べ物が喉を通らなかった。
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翌朝の景色。
今日から天候は下り坂。
当初の計画では2~3日山荘に逗留してこのエリアを滑って楽しもうということだったのだが、天候を考えると微妙なところ・・・・・
天気予報を見ると翌日は雪か雨。翌々日も回復間望めない。

昨日の悪天候で槍ヶ岳を目指し、ブリザードに阻まれルートを誤った登山者が命を落として今朝発見されている。
知人からの情報だと今日までで北アルプスエリアで4件の遭難事故が起きているとのこと・・・・・・・

明日、明後日の二日間何もしないで山荘に篭っているのもなかなか大変だ。

迷った結果だが、今日大喰岳からライディングをしてそのまま下る決断をした。


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日の出前の穂高連峰。
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ご来光

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ご来光を眺める登山者たち

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常念岳。
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朝食を済ませて雪の緩むのを少し待つが、この時点ではまだここから槍沢を滑って戻るか、大喰岳まで移動してそこからドロップするか迷っていた。
しかし山荘で一緒になったスキーヤーのTMZWさんに大喰岳を紹介したのだが、自分の都合でここから滑る旨を告げたらがっかりされてしまった。
すみません!

ということで、TMZWさんと一緒に大喰岳へ向かうことにした。

ところが、風が強くて雪が緩む気配がない。
しかし、このままバスに乗る都合で上高地へ下るには9時から9時半くらいまでがタイムリミット。
雪は緩まないが、TMZWさんと大喰岳まで行くことにした。

稜線の雪はガチガチ。
スプリットボードとTMZWさんのスキーは背負い、アイゼンで稜線を登り上げることにした。
飛騨乗越から稜線にとりつくも、ガチガチだ。
何年か前、ここでアイゼンが外れて命拾いをした経験があるので、慎重に大喰岳を目指す。
ここ大喰岳までのルートは槍ヶ岳山荘から見ると何ていうことは無いように見えるのだが、凍っているときはとても危険だ。

ヒヤヒヤしながら30ほどで大喰岳山頂。
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穂高連峰を眺がむる。
奥穂高岳も良く見えて、2009年に滑った奥穂高岳直登ルンゼも見える。
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大喰岳(標高3,101m)山頂より滑るカールを俯瞰。
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東向きではあるが、やはり斜面はガチガチ。
新雪を狙って滑れば大丈夫かと思いドロップイン。
しかし、気温が上がらないために新雪はクラストしている。
トップがモナカの中に潜ってしまい浮いてこない。
転倒を繰り返してカールの下部へ降りるも全く滑れていない。

前日槍沢を滑り降りていったスノーボーダーたちを思い出す。
「全く板が滑りません! 今年は全くだめですね」
と言いながら滑っていったのと同じだね。

大喰カールを滑ってくるTMZWさん。
板が走らず、彼も苦労をしてます。

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それでも燕岩の近くの急斜面まで滑り降りたころには標高が下がったこともあってか、雪が緩んできて板も走るようになってきた。
ホっとしたね。

で、グリーンバンドから山荘まで登り返し、もう一度槍沢を滑って下るというTMZWさんとはここでお別れ。
我輩は今日中に上高地まで下らなければならないので、このまま槍沢へ合流して槍沢ロッジまで滑る。

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グリーンバンドから下は板も走りけっこう快適に滑れた。
ババ平のテン場までは止まらずに滑り降りられ、続いてロッジまでツリーの間をほとんど滑れた。

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シール歩行で昨日懲りたので、今日はここからスノーボードは背負った。
それでもやはり昨日の疲れも残っているので横尾までは1時間20分もかかってしまった。

横尾まで来ると登山者たちで大賑わい。
槍までの閑散とした登山道とは大違い。
涸沢の賑わいが想像できる。

さて、あと三時間11kmを上高地まで歩かねば・・・・・・・

40分ほどで徳沢。
いつもここでソフトクリームを食べるんだけど、今日もそれを楽しみに歩いてきた。
賑わう徳沢園で冷たいソフトクリームを食して残りの2時間あまりを歩こうと歩き始めたら、山梨から来て北穂高岳登山をしてこられた女性一名、男性二名の方達たちと一緒になり、楽しくお話をしながら歩けたのでとても助かった。
つまらない話にお付き合いしていただき、皆さんありがとうございました。
お陰で気も紛れ、辛い道中も楽しく歩けました。

駐車場も皆さんと同じ足湯のだいじ第二駐車場だったのでそれもラッキー。
駐車場で皆さんと別れて我輩はいつもの竜島温泉で汗を流す。

自宅まではまだまだ走らなければならないけど、これもいつものことで、松本市内の生姜焼き専門店『豚さん食堂』で帰路の前の腹ごしらえ。
注文したのは今回は『本気のしょうが焼き定食B(大・豚バラ300g』(笑)
満腹で帰宅しました。

ま、今回は天候の影響で一日しか楽しめなかったけど、あの懐かしい槍ヶ岳エリアに行けたことが幸せなんだよなあ~。
年齢的にも体力、気力的にも再度行けるかどうかわからないけど中身の濃い満足のいちにち二日間だった。
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by sakusaku_fukafuka | 2019-04-30 12:25 | 2019年 雪山三昧 後期 | Comments(2)